子供の絵本店

ねんどぼうやは、みるみる成長し、家々の屋根よりも大きくなり、村中の家畜を食い荒らし、やがては老夫婦や村人までも食べてしまう。そんな奇想天外のストーリーをさらに盛り上げるのが、スミスが描く挿絵である。繊細なタッチで描かれた挿絵からは、ねんどぼうやの肌の感触まで伝わってくるほどだ。ねんどぼうやの土色の肌と無機質すぎて恐ろしい表情からくる異様な迫力、対して、森や動物たちの繊細に描かれた絵があまりにも対極的で強力なインパクトを与えている。今にも息遣いが聞こえてきそうなねんどぼうや！この本を母親と一緒にみている幼児は、ストーリーが意外な方向へ展開する中盤頃には、きっと泣き出してしまうに違いない。

しかし、僕はこの不思議な絵と物語になぜか強く惹かれるものがある。最後は、絵本らしく「めでたく」終結するが、その終結にも一筋縄ではいかない暗喩的な意味が含まれているようで気になってしかたない。この絵本は、是非大人に見て、そして読んでもらいたい。「不気味な絵だ」と閉じてしまうか、それとも、強烈なまでの個性に惹きつけられじっと見つめてとりこになってしまうか…、きっと大きく分かれることだろう。その分かれ目こそがその人の感性であろう。それにしても、不思議な絵本だ。これはもしかするとロシアの妖怪を語っているのだろうか？それとももっと深い意味があるのだろうか？